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生活の基盤である衣食住の<住>ひとつとってみても、例えば、親子二世帯住宅は非常に少なくなり核家族化してきた。親は子供に面倒をかけたくないと考えるようになり、子供は私的なおつきあいが主となって、近所づきあい、町内での関わり合いなどは非常に希薄となってきた。<衣>も、それぞれが個性を主張する目的で選ぶ時代になっている。<食>に関しても、女性の社会参加が進み、家事に費やす時間や感覚が変わってきた。家庭で手作りをするというこだわりが少なくなり、でき上がったものや手軽なものを買い求めることがごく日常的になってきた。健康への意識は高まってはいるが、若い頃から住宅ローンをかかえるなど経済的な現状を考えると、日常生活を利便性に頼りがちとなるのも否めないことだ。
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先日、名古屋のあるお豆腐屋さんが、『濃いとうふSWEETS』という店をオープンされるにあたり、当社がお手伝いをさせていただいた。従来、お豆腐屋さんは早朝販売のため夜中から製造をしてきたが、現在は機械製造で大量生産したものが主体となり流通している。このお豆腐屋さんも流通向けに経営をなさっているが、このたび、おからや豆乳を中心としたお菓子の専門店として、デパ地下へ進出されることになった。オーナーに、何故、スイーツ分野への進出を考えたのかをお尋ねしたところ、「豆腐だけでは商いにならない、お豆腐から派生するバリエーションを広げていかなければ企業として生き残れない」という返事が返ってきた。豆腐業界自体がそういう現状にあるという。幸いに豆腐は健康食品という消費者の意識が高い。スイーツブーム到来の機も、この企業は見逃さなかった。
もっと視野を広げてみると、すでに一般の和食や惣菜製造関連など食品産業全体が、デザート販売に進出してきている。いわゆる異業種のコラボレートが顕著に現れてきた時代である。かつては個々を専業としてきた企業が開発力を持ち、それぞれ得意とする分野の幅を広げはじめてきた。
これまで当社のお客さまの大半は和菓子屋さんであったが、こういった異業種企業からのご依頼を受けるようになってくると、その発想や提案がものすごく勉強になる。専門店は同業他社ばかりを見ていてはいけないことを痛感する。
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今年1月、日経流通新聞は、コンビニエンス業界最大手のセブンイレブンが、全国の弁当やデザートのベンダーに和菓子製造ラインを追加し、本年中に和菓子の本格販売をスタートすることを報じた。国産小豆使用の本格志向、豆大福や白玉ぜんざい、串団子、おはぎ、お饅頭などを独自に開発し、専門店の和菓子とほぼ同じ価格帯で販売するという。さっそくこのお彼岸期間中は、レジそばにテーブルが設けられ、おはぎがパック入りでうず高く積まれていた。数年前には、“やきたて”“とれたて”というキャッチとともに、パン棚のメインが一斉にオリジナルブランドへ変わった。コンビニエンスストアは一歩ずつ着実に進化していこうとしている。
コンビニでは、気候の変化による先読みはもちろん、商品売上げのデータに基づいて、売れないものは廃し、売れるものは棚割を変えて、日々販売を工夫している。その緻密なデータから、和菓子の潜在需要を掴んでいたのではないか。同社の取締役は、「これまで和菓子に注目してこなかったのは当社の怠慢」と述べているが、すでに独自の製造ラインをもつデザート部門では、いわゆる“コンビニデザート”を次々と開発しヒットさせてきたという実績をもつ。和の食材にも注目し、いちはやく「和デザート」の季節展開を先行させてもきた。これまで仕入れを頼ってきた和菓子メーカーへの不満もなかったとは言えないのではないか。
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この動向は、和菓子専門店にとって脅威である反面、和菓子そのものの裾野を広げる心強い光にもなるだろう。若い世代が和菓子に眼を向けはじめると、次は専門店の和菓子を食べてみたくなるというシナリオもある。こういった状況をふまえ、和菓子専門店が今後をいかに判断していくか、そのことが非常に大事なことだ。
コンビニ最大手が本格的な和菓子づくりに取り組むというのだから、かなり研究し尽されたものが出てくるだろう。勝負どころとしては、味なのか、包装なのか、伝統やのれんなのか。何度もお伝えしてきたように、<専門店とはいったいなんなのか>ということにもう一度立ち戻って考える必要があると、やはり言いたい。
異業種が業界へ参入してきた時、和菓子店のオーナーはどれだけ<新しい菓子のスタイル>を思い描けるだろうか。あくなきおいしさへの追求は大前提としても、これからの専門店は、従来の伝統を維持していくだけでは難しい。どういう切り口であれば、いまの若い世代が和菓子ファンになっていくか、つまるところは自らマーケティングを行ってゆくしかない。いろんな場所へ足を運び、いろんな業界に眼を向け、いろんな角度から状況を直視してヒントを掴んでゆくことが非常に大事になってくる。
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我々の立場からは、やはりパッケージについてお伝えしておきたい。パッケージの使命は、その商品の特長、特性を最大限引き出すことにあるが、最低限、その菓子がどの方向へ向いているか、例えば健康志向のお菓子か、オシャレさへ向うお菓子か、その土地への愛着へ向うお菓子か、などが掴めなければ、商品のメッセンジャーとはなりえない。
最近、“自分が食べるお菓子”という自分のための消費が、娯楽やファッションと同様、顕著に現れてきた。会社帰りの時間帯やバレンタイン前、スイーツイベント中のデパ地下の活況ぶりを何度も見ていただくといいと思う。チョコレートが1個500円でも1000円でも、“自分が食べるのだから”と躊躇なく買い求める消費者心理とはどういうものであるか、今後はぜひ掴んでおく必要がある。
こうした購買目的の分岐により、パッケージそのものが購入動機となる傾向も現れてきた。自家消費商品に対しては過剰包装を避けるべきだと考えてきたが、これからはお菓子そのものの選択基準にファッション性が占める割合も増えてくるだろう。現に、「このお菓子の缶が素敵だから」「大好きなパティスリーの箱を小物入れに使いたい」といったパッケージへの愛着は、このところの雑誌の特集などをみていても明らかだ。もちろんパッケージは要らない、お菓子だけでいいという人もいるだろう。無駄なくシンプルに生活したい世代の価値観は一様ではない。 |
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当社は「文化の香るパッケージ」を提案しつづけてきた。和菓子が文化性を帯びていることは、これまで歴史が物語ってきたし、実生活でもおつきあいや一家団らんの在り方として根付いていた。パッケージは菓子文化の一端を担ってもきた。当社は、そういったお菓子の背景を大切にしながら、地元のアーティストによる表現をパッケージデザインする、アートコラボレーションを数多く提案してきた。
これはとてもやりがいのある手法で、時代の上澄みだけをグラフィックデザイン化するのとは違い、パッケージが時間とともにコーポレートカラーとしての深みを増しながら、メッセンジャーとなって広がり浸透していく力をもっている。小布施堂さんの北斎のデザインパターン、六花亭さんの坂本直行さんの水彩画、虎屋さんを筆頭に老舗のパッケージデザインは長年築いてこられたブランドサインとして不動のものになっていることからもご理解いただけるだろう。
一つ付け加えておくと、アートコラボレーションで大事なことは、オーナーがそのアーティストに惚れこむことにある。店が中心となって作品展を開いたり、アーティストを応援したりすることで、お菓子や作品を通じてだけではない出会いが相互的に広がっていく。お菓子へのこだわりだけでなく、アートやファッションへのこだわりが、店主や店の個性となり魅力となる。文化を香らせるとは、そういうことだと思っている。
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