|
■GMSが目指す店の姿
先日たまたま、ダイエーやイトーヨーカ堂再生への取り組みを伝える番組が放映されていましたが、ここにきて、GMSが非常に苦戦しています。傘下のコンビニは
好調なのに本体の売り上げの低迷が、ギリギリのところへ来てしまいました。このままでは見通しがたたない。
CEO自らが売り場改革の陣頭に当たり、品揃え、陳列方法、値決めなどについて、過去のやり方をばっさりと否定していく場面で、すっかりスーパー感覚になってしまっ
ているバイヤーたちはどう変えていけばよいのかと試行錯誤しています。CEOが、 一つ一つ「そうではない」と伝えるが、GMSならこの商品でこの価格帯という感覚が、あまりにもバイヤーや売り場に染み付いていて、ワンランク上、ツーランクとい
う双方のものさしにズレがある。そこに外部から、カリスマと呼ばれるスーパーバイザーが投入され、これまでの考え方を根本から変えていく様子がレポートされていま
した。
ここ数年の消費志向の変化を的確にとらえたカリスマが強く主張するのは、「モノづくりに対する執着」と「ライフスタイルを提案するという販売姿勢」。売り手がメッセージを込めて作る商品は必ず評価されます。そのためには製作段階で手を抜かず、必ず消費者が見えていなくてはなりません。百貨店を目指すのではなく、生活に密着できる条件にあるGMSがもっと実質的な力をつけていくために、これまでの考え方全体を細かく切り替えていく作業が続けられています。
|
 |
|
■付加価値の見極め
ものが大量であることが豊かさの象徴であった時代は過ぎ去りました。アメリカ大手GMSのウォルマートは、独自の仕入れ方法でアメリカ型の大量販売をそのまま日本でも行い、見事に失敗。現在、販売方法を再編し再出発の準備をはじめているといい
ます。日本人が魅力を感じる消費とは何なのか、とあらためて問いかけ、国土に比例 した消費量がかなう全米や中国との違いを痛感しています。ご存知のとおり、アメリ
カ人は食材を大量に購入しますが、日常の食事に対して家庭の味を楽しむとか雰囲気を楽しむという位置づけはないように思います。日本人は、大量に安く買うことよりも、少しづつでもいろいろな素材で毎回の食事を多彩にしたい。そういった基本的なことがアメ
リカと日本とで決定的に違っていることを、ウォルマートは履き違えてしまったのかもしれません。
今の日本の消費者が求めているのは、便利性とか、世の中にない目新しさではなく、 付加価値であることは間違いないでしょう。付加価値というのは、百人十色みな違う。ブランドに付加価値を持っている人もいるだろうし、食品にしても、カラダにや
さしく、アレルギーを起こさないなど、それぞれに対して要求がなされます。そうい った価値にできるだけ対応しようとすると、その手前の品揃えがしっかりしなくては
なりません。靴も従来のようにSMLという単純なサイズ分けではなく0,25cm単 位で細かくそろえ、履きやすいものの中から選択できるよう細分化されています。し
かしそこまでやったところで、品揃え自体は消費者にとっては便利性にすぎない。じ ゃあ付加価値というのは何かというと、ずばり品揃えのセンス、質の高さ、デザイン
という売り手の感覚を問うものなのです。
価格について、紳士靴の市場で1万5〜6千円台が売れ筋だとすれば、それを売るために、5〜6万円のラインを揃えることが必要になってきます。5万円、6万円、3
万円台があって1万2〜3千円がものすごく手ごろな、リーズナブルな商品になる。 1万2〜3千円台を主力としたいのに、7〜8千円の商品を置くことはないでしょ
う。そこに3万5千円の靴があり、7万円もあれば、たとえ売れなくても、目を楽し ませるという演出が必要となってくる。5万円〜7万円の靴はセンスがいい、かっこ
いい、色目がいい。これまでのスーパーにはなかったね、という品揃えにしていかな くてはならない。そうすると、靴売り場だけでなく、他の売り場もトータルな演出の
見直しということを徹底的にしないと、相乗効果が出てこないでしょう。とこ が高級 品を置いている端っこで、山積みの安売りをやっているのでは、やはり買い物に夢を
持てなくなります。そういった数々の矛盾を専門のスーパーバイザーは指摘し、現場 で意識付けしていきます。
一つのアイテムに何日かけても、好きなものがみつかるまでは買わないというのが今の消費動向です。GMSにとって、そのとの感覚差は近年見過ごせないものであったはずです。
中央と地方の格差はあれ、一人一人が個性を示したい時代、商品センスへの執着とい うものが顕著となり、シビアなお金の使い方になってきました。
専門性の高いデパートでは、カテゴリーごとに売り場の雰囲気を変えてみたり、専門店街のような演出をしたり、デパート以外で開発をした商品を持ってきてみたり、顧客満足に目を向けた販売展開をしています。そこでも満足していないお客さんという
のは、実は時代をリードしている生活者なわけですが、では、彼らはどこで買うのかというと、やはりその商品にこだわって勝負する専門店です。成功をおさめているのは“わたしだけの店”、徹底的な商品のセレクトのみがあり、効率のよい大量販売とは対極にあります。
|
 |
■嗜好品の原点
そこで、食品の分野を一般食料品、嗜好品に大別すると、一般食料品も細分化されています。核家族化もすすみ、今まで家族で120必要であったとすれば、現在は60以下、下手をすれば30以下でもよいくらいに少量買いをするようになりました。
その代わり、30という少ない量でも、おいしく食べたい、健康によいものを食べたい、いちいち疑問に思わずとも安心して食べたい、生産者の顔の見えるもの、どうい
う条件で作っているものか、どういう肥料で作っているかなど生産者履歴、アレル ギーなどハンディキャップを負っている人の身体にも優しいかどうか、栄養価が高
く、バランス食品として有効かどうか、それでも満足できないときはサプリメントなどを利用して、健康に留意するようになりました。例えば、百貨店の「正直村」のよ
うなコーナーでは、トマトにしてもキュウリにしても、スーパーで買うより2〜3割 高価となりますが、それを承知で消費者はこだわり、しっかりとした良品が選ばれて
いきます。
いつも考えることですが、フルーツやお菓子など嗜好品を食べる目的は何でしょう か。食べることで幸せを感じる、一日の疲れを癒すことができる、といった位置づけだけでしょうか。もてなしの場面を演出してくれる商品においては、オリジナルへのこだわりが強くなってきました。「私だけが見つけたもの」、「私の好きな味」とい
った、味の基準がはっきり出てきています。
しかし、作っている菓子業界の実際のバックボーンはどうなっているかというと、大 量生産、大量消費型から抜け切れてない。一日に何万個も同一の商品を作る。カステラにしてもブッセにしても、全国で同じものが作られています。原料に工夫はなされ
ていても、どこにでもある特徴の見えない味が流通する。
嗜好品がそれでいいのか、と、ふと心配になることがあります。嗜好品には顔がある。長崎には長崎の顔があり、金沢には金沢の顔があります。ひょっとすると、土地名ブランドをアピールする、という手法もあるのかもしれませんが、たいていの場
合、生産過剰による拡大によって、どのように売られているのかを気にしなくなってしまうようです。
特に和菓子は、味を支えている原料とレシピがその土地のものであったり、云われ があるものであったり、一包みの中に店の歴史、ものづくりに対するこだわりが結集しています。だからこそ、贈答の楽しみがあり、食べる楽しみがあります。楽しむこ
とが嗜好品を買う目的であることははっきりしている。今の時代のお菓子屋さんは、 経営者として、味の均一化や個性の喪失を一番悩んでおられるのかもしれません。 |
 |
■後世に残したい日本の菓子
そうしたとき、私は「原点にかえれ」と言いたい。ここで一度、いい意味での企業の 縮小があってもいいのではないか。企業を支えている社員の数、給料、経費、店舗の
維持などのために生産量、販売量が必要になっても、手作業にして価値を上げ、生産 を1/3に縮小することも考えられます。売り場も地元だけに。雇用の維持ができなく
なるとか社会的責任とか別の問題が出てきますが、これから長い目で見たとき、どの 道を選ぶのかは避けて通れないと思います。
今回「専門店の時代の到来」というタイトルで、まさしく時代が求めている商品は 専門店にこそある、それぞれが得意とする味をお客さまに支持してもらえる手作り
で、丁寧なサービスと丁寧なメッセージを行えば、必ずや売り場を活性化していくこ とができるということをお伝えしたいと思いました。今後の消費量の減少を考える
と、量の拡大ではなく、質の拡大を狙っていくチャンスでもあります。
老舗の和菓子屋さんは伝統の技術によってのれんを支えてこられ、独自のこだわり をもって商品を作っておられます。これがまさしく専門店の姿。作るものの誇りと喜
びがその店に代々伝わっていて、それこそがブランドとしてお客さんに支持されるの です。ただ明らかに世代交代があり、求められる味の変化にも応じてゆかなければな
りません。
それは大きさについても同様で、食べやすいサイズと形態、衛生的に保護できるパッ ケージの工夫も必要です。もっと大事なことは、専門店としての誇りと自信が消費者
にメッセージできていて、その大切さが店員さんの一人一人にまで行き届いているか ということ。お菓子の召し上がり時間についての情報も含め、店側としてプライドを
もった販売ができているかどうか、ということ。日持ちしますということが一つの特 長とされた時代もありますが、何よりおいしさを優先させてこそ、満足できる商品に
なりえるのだと思います。
過去六回、いろんなテーマでお話しましたが、専門店の時代が到来するということ はある意味、喜ばしいことだと思っています。日本のものづくりはアメリカ型ではな
く、後継者の問題とか技術者の養成とかいろんな問題はあっても、根っからヨーロッ パ職人型であるということ、技術立国の歴史と精神へと立ちかえることができます。
先月、弊社は「菓子の記録帖」というギャラリーをオープンしました。私が3〜40 年前に歩き回って営業した全国津々浦々のお菓子屋さんで、まだまだ元気にやってお
られる店があります。今の時代にかけがえのないものとなってきたその店のお菓子 を、東京の方々にも出会っていただきたいというのが、ギャラリーの主旨です。コン
セプトは「後世に残すべき日本の菓子」。原料を厳選したこだわりの菓子を、弊社独 自のスタッフで評価して、さらに和菓子の文化的要素、菓子が育った土地の背景も紹
介していきます。少しでも和菓子ファンを増やす“場”となれば幸いです。
さらにその商品を独自のサイトにのせて、インターネットで販売することにしました。そうすることで、小さいながらもキラリと光るお菓子を、遠方の菓子愛好家の
方々にも知っていただくことができます。今、売れ筋のおいしい菓子や名前が知られ ている有名店のみを集めたポータルとは違った切り口ですが、現実にギャラリーの茶房で、これはおいしい、これは珍しいと、広げてくださるお客さまの力がすでに見え
てきています
ささやかながらではありますが、お菓子のメッセンジャーとしてお手伝いをしてゆく のも、菓子パッケージ一筋に取り組んできた我々の使命ではないかと思っています。
上京の際は、ぜひお立ち寄りください。 |
|