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Vol.7

 新年あけましておめでとうございます。
 昨年をかえりみると、全般的にどこか寒々しい印象の年でした。次々に起こった事故や犯罪、そして偽装。それぞれの奥に見える人間の心のダークサイドが、本能むき出しでモラルもなにもない日本の社会を象徴しているかにも思えました。自分の強欲を優先して周りのことは考えない、物事を偽ったり人を騙したり、わからなければそれでよい、というようなことが通用する社会になってしまったのでしょうか。
  株式会社アンゼン・パックス代表取締役 尾関武男

 生活が便利になっていく一方で、一人一人の心の豊かさは減少しているようです。去年、あるお坊さんが時代を表す一語として「愛」という文字を書いておられましたが、今の時代に一番切望されていることなのかもしれません。人に対して心地よい振る舞いとか言動とか、いろんな仕草や行動の中に置き去りにされたことを、もう一度思い出したい、心温まるふれあいの「愛」に触れていたいと、誰しもがその願いを持ち、大切であることもわかっているのに、社会の利便性の中で一番なおざりにされています。そういった欠如が事件や事故の要因になっていることも、きっと誰もが感じているでしょう。ただ教育の問題と片付けるわけにもいかない根深いものを感じます。
 その場限りがよければそれでよい、という考え方が今の現象の一つの原因としてあるとすれば、食のシーンにもかなり深く浸透してきている感があります。スローフードのようにその土地にある、季節の食材を使って確かなところで食べようという動きがある一方で、調理をしなくても出来上がったもの、温めれば済むものが手軽に買えるようになりました。食事をするということはただ単に空腹を満たすということではなかったはずです。同じものをみなで分け合って食べ、家族のふれあいを考え、同時にそこが教育の場でもあるということも、もうすっかり忘れ去られたかのようです。 現代の食のシーンをただ時代の変遷と捉えればいいのか、私たち菓子業界にとってもこのことは真剣に考えるべきことではないでしょうか。助け合う心とか、日頃の近隣とのおつきあいとか、気配りとかまでを含めて、「ふれあい」を考えるシーンにお菓子が果たす役割は大きいと思っています。
 昨年はアインシュタインが相対性理論を世に発表して100年、『物理100年の年』ということで物理学会がいろんなイベントを行っていましたが、先日ある番組で、アインシュタインが来日し、約1ヶ月以上、日本各地に滞在した時のエピソードが特集されていました。そして、当時、母国にあってマスコミに追いかけられストレスをためていた彼が母国に向けて書いた手紙の中で、「こんな素晴らしい国はない、おそらく世界一だろう。人間が素晴らしい。知的で芸術性があり、美的で心優しくて、努力家で謙虚であって…」と日本のことを書き綴っています。門司港から帰国したときは、船上からハンカチをふり涙して去っていったそうです。わずか一ヶ月ほどの滞在で、日本がそれほど感動を与えたというのは、人が人に対する感動を与えたことになるのでしょう。当時の日本にあった素晴らしい「ふれあい」の心に、私達が立ち返ることはまだ可能でしょうか。


■お菓子のパッケージカラー

 今の日本を色に例えるとどんな色でしょうか。今、どんな色が望まれているのでしょうか。
 昨年、あるお客さんのパッケージ・リニュ−アルを一年間かけてお手伝いしました。その際、デザインベースをお願いした外国の女性アーティストは、第一声、「街が暗いからといって、日本はなぜお菓子の箱にまでこんなにダークな色を使うのか」と言いました。「包みをあげてみるとお菓子はきれいでとてもおいしいのに、そのおいしさの感動をどうして食べる前に与えてあげないのか」。この言葉が強烈に僕の心に残っています。
 何百年という伝統ある城下町ですが、まさしく保守的で地味な色合いの街、暗い色があたりまえに使われています。気候を含め全体がそういう地味な中で、人々が着ている服も黒っぽい色、おいしさを伝えるべきお菓子の箱も暗く沈んでいます。なぜそんな色を選んでいたのでしょうか。まるで何かに囚われてでもいたかのようです。ではおいしさを示す感動の色とはどんな色でしょうか。
 私達は思い切って、長い歴史の中でなじんできたものを打ち破るようなヴィヴィッドなデザインカラーへの切り替えを提案しました。 お菓子のパッケージというのは、当然ながら、食べる前に同業他社さんとの差別化をするものですが、もっと言えば、嗜好品であるがゆえに、ある意味、時代を先行してリードしていくツールなのかもしれません。お菓子がどんな風に買われているのか、自家用、ギフト用だけではなく、「自分のためのお菓子」という新しい購入スタイルも起こっている時代です。私達は、その土地の表現もこれまでと違う手法でできないかということを考えプレゼンテーションにトライしました。
 そんな時、ふとブティックの女性ブランドに目を向けると、同じ色味でも非常に多種多様な色を使っていることに気がつきました。例えばヴィトンの村上隆による新しい表現は、これまでのヴィトンカラーを一新している。すべからく装いのファッションは新しく独自なクリエイトの手法が先行しています。お菓子も好みで選ばれるものであれば、お菓子に装いを与えるパッケージも時代性を映すファッションであるべきではないか。菓子だからそこまでしなくてもと考えるのではなく、見ている消費者がどういう視点でそのパッケージをとらえているのかを考えてみることこそ大事なことではないか、という考えにいたりました。カテゴリーにとらわれることなく、インパクトとして「あ、かわいらしいね」「あ、おいしそうだ」という瞬時の感動を起こすデザインを、もっと勉強して提案していく必要を再認識する機会となったのです。他にないものを創りだすということは、これまでの垣根を一旦、とりはらうことでもありました。


■パッケージデザインに必要なこと

 私どもはパッケージの供給だけでなく、長年デザインの相談にも応じてきました。すでに細部にわたる構想をもち、ご相談になるオーナーもいらっしゃれば、どういったデザインが自分の店に合うのかというスタートからの相談もあります。
 パッケージをリニュ−アルする、新しくデザインするというきっかけは、「新店舗をつくる」「世代交代する」「店のイメージや販売スタイルを変える」「新製品を出す、ブランディングする」などによりますが、原点となるのはお菓子へ何を託しているのか、です。お菓子をどんな人に食べてもらいたいのか、どんなシーンで食べてほしいか、といったイマジネーションをどこまで広げることができるかがデザインを決めるポイントです。そこにはお菓子のもつ「風土」「歴史」「テーマ」「時代性」などの要素や想定が含まれます。それを広げて、拡張してみること、それこそがパッケージング計画に欠かせない検討事項、コンセプトメイキングの最初の作業です。「お菓子に込めた想いを伝えるパッケージ」には、文字通り、様々な要素がパッケージされています。オリジナルなものづくりは、決してものまねではできません。
 なぜ、この形態なのか、なぜこの色なのか、なぜそのモチーフが配されるのか、作っている場所、店の立地条件、販売経路、価格帯、買う人の性別、年齢層、所得層、ライフスタイル、自家消費の場合、ギフトの場合、両方対応したい場合、と、一つ一つマトリックスをつくり想定し、商品コンセプトを絞り込んでいきます。こういった作業をヒヤリングと提案を重ねながら3ヶ月くらいかけて行います。この過程があってこそ、クリエーターのアタマの中にはデザインの構想ができ上がっていくのです。
 デザインの方向性をフィックスし、最後に決定するのが素材選びです。紙やフィルム、天然素材などの選択には、お菓子の特性、日持ちの問題、持ち運びの利便性、スリム化、廃棄のしやすさなどの他、コスト計算がともなってきます。ここで、ロットの問題、在庫する場所の問題など物理的な要素も絡んできます。
 コストを優先してしまうと、当然ながらデザインのクオリティは下がってしまうわけですが、そのお菓子に最適なクオリティとは何でしょうか。製品化に向け理想に限りなく近いデザインに仕上げるため、新たな工夫を生むことに尽力するのみです。この他に大切なことは、できあがった商品をプロモーションするための販売促進の費用を予算化しておくこと、ここまで視野に入れておけば万全です。
 最後にぜひ一言お伝えしたいことは、こんな風に大切に作り上げていったデザインの価値は、製品となったのち何年もかけて磨かれてゆくものだということです。長年使っていくことで、そのよさが認められ本物になっていく、商品企画とはそういうものだと思います。一言でいうと、パッケージのリニュ−アルの成功不成功は、すぐに答えがでないものであるということです。
 以前の稿でも書かせていただきましたが、当社が企画室を立ち上げ、ものが見えないビジネスをすすめることに関してはとても時間がかかりました。それでも数多くのデザインワークのご提案をさせていただき実績を積んできたこと、パッケージされた商品がお店の歴史とともに生き、多くの人に愛され続けていくこと、それがお店の繁栄になっていくことに、いつも喜びを感じます。
 パッケージデザインをどう企画するか、その制作に十分な検討を重ねることは経営を確かにする上で欠かせないことです。ぜひ最良のパートナーをお選びください。
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