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生活が便利になっていく一方で、一人一人の心の豊かさは減少しているようです。去年、あるお坊さんが時代を表す一語として「愛」という文字を書いておられましたが、今の時代に一番切望されていることなのかもしれません。人に対して心地よい振る舞いとか言動とか、いろんな仕草や行動の中に置き去りにされたことを、もう一度思い出したい、心温まるふれあいの「愛」に触れていたいと、誰しもがその願いを持ち、大切であることもわかっているのに、社会の利便性の中で一番なおざりにされています。そういった欠如が事件や事故の要因になっていることも、きっと誰もが感じているでしょう。ただ教育の問題と片付けるわけにもいかない根深いものを感じます。
その場限りがよければそれでよい、という考え方が今の現象の一つの原因としてあるとすれば、食のシーンにもかなり深く浸透してきている感があります。スローフードのようにその土地にある、季節の食材を使って確かなところで食べようという動きがある一方で、調理をしなくても出来上がったもの、温めれば済むものが手軽に買えるようになりました。食事をするということはただ単に空腹を満たすということではなかったはずです。同じものをみなで分け合って食べ、家族のふれあいを考え、同時にそこが教育の場でもあるということも、もうすっかり忘れ去られたかのようです。
現代の食のシーンをただ時代の変遷と捉えればいいのか、私たち菓子業界にとってもこのことは真剣に考えるべきことではないでしょうか。助け合う心とか、日頃の近隣とのおつきあいとか、気配りとかまでを含めて、「ふれあい」を考えるシーンにお菓子が果たす役割は大きいと思っています。
昨年はアインシュタインが相対性理論を世に発表して100年、『物理100年の年』ということで物理学会がいろんなイベントを行っていましたが、先日ある番組で、アインシュタインが来日し、約1ヶ月以上、日本各地に滞在した時のエピソードが特集されていました。そして、当時、母国にあってマスコミに追いかけられストレスをためていた彼が母国に向けて書いた手紙の中で、「こんな素晴らしい国はない、おそらく世界一だろう。人間が素晴らしい。知的で芸術性があり、美的で心優しくて、努力家で謙虚であって…」と日本のことを書き綴っています。門司港から帰国したときは、船上からハンカチをふり涙して去っていったそうです。わずか一ヶ月ほどの滞在で、日本がそれほど感動を与えたというのは、人が人に対する感動を与えたことになるのでしょう。当時の日本にあった素晴らしい「ふれあい」の心に、私達が立ち返ることはまだ可能でしょうか。
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