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上野桜木町は震災や空襲の難を逃れた数少ない地区のひとつ。明治の頃は多くの文士が憧れて住んだという往時の面影を、いまも古い建築物に見ることができる。
桃林堂上野店は、そんな桜木町の一角、上野の森を越えて東京芸大を抜けたすぐ裏手に居を構える和菓子店だ。
築年数を感じさせる木造の店舗は、都会的な青山店とはうってかわって昔懐かしい日本家屋。屋外にはほどよい野趣を漂わせる程度に緑がしつらえてあり、屋内にはその延長のように自然な形で活花が活けてある。
青山店が工芸ギャラリーを併設し現代の趣を提供する店舗だとしたら、上野店は、自然の趣をしつらえ、その風懐と共に四季折々の和菓子を提供する空間づくりをしているといえるだろう。 |
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■桃林堂上野店
東京都台東区桜木町1-5-7
03-3828-9826
http://www.torindo.co.jp/ |
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お菓子は、こぢんまりと上品な陳列棚の中に、間隔をおいて丁寧に置かれている。見合った場所にそれぞれの世界を演出しているゾーニングの適確さは、商品を売る上での姿勢や商品についての理解が確かなものであることの現れだろう。
お客さんが切れない店舗であるのに、常にきちんと整頓されているバックヤードからは、忙しさにとらわれることなく心を込め、一人一人をもてなしている真摯な様子が伝わる。
パッケージは全体的に過剰な装飾を排したデザイン。異国趣味が香る桃のマークや穏やかな色味のせいだろうか、シンプルな中に有機的な雰囲気が漂い、お菓子の滋味深い味わいや素材の良質さを連想させる。
店内の一角に設けられた小上がりで、抹茶とお菓子をいただくことができる。一人一人のお客さんに見立てられたかのような抹茶茶碗にも、もてなしの心が感じられる。この季節のおすすめは、さらりとした餡と葛の風味の豊かな葛桜。小さく可愛らしい鯛に上質の大納言小豆餡が入る「小鯛焼」や、砂糖漬けされた根菜と果実の滋味が味わい深い「五智菓」は定番として好まれている。
自然の風雅とともに和菓子を愉しめる場所。今の東京では貴重な店づくりだ。
(text&photo by 大町友美) |
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