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茶の間 菓子の間
     
お茶とお菓子の間をとりもつティータイム。仕事の傍ら、お茶に魅せられてアジアの茶場を探索する広岡さんは、菓子通としても知られ、お茶をみつけたらお菓子、お菓子があればお茶を、と常にマッチングを愉しんでおられるとのこと。日頃の愉しみ方からおもてなしのアイデアまで、ジャンルやスタイルを問わず綴っていただきます。
 
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茶の間菓子の間





年の仲秋は、お天気がいまひとつ
したが、雲の合間から少しだけ垣間見ることができました。駅に向かう道すがら、ビルの上方に月を発見。うまく撮れないかもしれないと思いながらも記念にとカメラを向けていると、会社帰りのビジネスマン風のオジサンが、『あ、今日は仲秋の名月か、カメラ撮っているから思い出したよ』などと振り返って話しかけてきました。そんなふうに見知らぬ人と、ほんの些細な笑顔の会話を交わすとき、なんとなく幸せな気分になれるのです。
 さて、その仲秋にちなんで、横浜の中華街に月餅を求めてきました。「翠香園」の「金銀肉月」と「蛋黄蓮蓉」。金銀肉月は金華ハムが入ったもので、お店の一番人気だそうです。もうひとつ蛋黄蓮蓉は、塩卵が1個入った蓮の餡のもの。蓮の餡のものは珍しいから、これにしなさい、というお店の方のお勧めに従うことにしました。本当は塩卵2個入りもあったのに、タッチの差で売り切れてしまったところでした。2個入りは明日また買いに来なさい、との、またなんとも中華風な会話には、商売言葉の温かみと不思議な心地よさがありました。本当にまた、明日来てしまいそう。
 月餅の金銀の名前に合わせてというわけではないのですが、お茶は、同じく横浜で求めた「金片単叢」にしてみました。初めて見る名前でしたが、単叢とついているので、きっと私の好みだろうと推測して飲んでみたら、これが当たりでした。月の光が地球に届くまでの、森閑とした空気感が漂うような、そしてその光が真直ぐに心にまで響くような、すっきりとした味わい。それでいて、やわらかく、香り豊かでした。6,7煎はいけますと言われて、たぶん私は7煎も,8煎もいれたでしょうか。それでもずっと美味しくいただけたのでした。
 ところで実は私、木の実の月餅といえば思い出すお菓子があるのです。やはりフルーツの皮の砂糖漬けやアーモンド、栗、くるみ、いちじく、ナッツなどの木の実を、香辛料とともに、ぎっしりと蜂蜜で円形に固めたイタリアのお菓子パンフォルテです。どっしりと重い感じのお菓子という意味でも、そっくりだと思っているのです。チーズづくりを訪ねてイタリアへ旅行した際、同行した友人が途中ひとりシエナへと足を延ばしたのですが、旅の終わりにその友人と再会した折に、シエナのお土産にとプレゼントしてくれたのがパンフォルテ。
 中世、シエナの修道院で作られたという伝統的なお菓子だそうです。世界中どこにでも木の実はあるのですから、世界のそこここに、似ていると思われるものがあるのは当然のことでしょうけれど、別の機会に西安を旅したとき、城門から見て西の方角がシルクロードに繋がり、果てはローマにまで続く道が、ここから始まっている、と聞いたときに、月餅とパンフォルテは、私の心の中で、強く結ばれてしまったかのようなのです。しかもパンフォルテは、確か、東方のスパイスの香りがしていたような。どこかで、微かにでも、きっと人と人とがお菓子を挟んで繋がっていたのだ、というような気がしてきます。
 そして月末の茶道のお稽古のお菓子も、月づくしでした。主菓子とは別に、お薄のときには同人たちのお土産が並びます。今回は金沢中島の「おぼろ月」と豆政の「月しろ」でした。お砂糖を固めた中に小豆が詰まっている月しろを見ながら、これは、まるで和製のパンフォルテか月餅みたい、と少々飛躍気味ですが、勝手に思いを馳せたのでした。

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