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茶の間 菓子の間
     
お茶とお菓子の間をとりもつティータイム。仕事の傍ら、お茶に魅せられてアジアの茶場を探索する広岡さんは、菓子通としても知られ、お茶をみつけたらお菓子、お菓子があればお茶を、と常にマッチングを愉しんでおられるとのこと。日頃の愉しみ方からおもてなしのアイデアまで、ジャンルやスタイルを問わず綴っていただきます。
 
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茶の間菓子の間

 今年に入ってから「社中の皆で旅行に行きましょう」という話が本格的になり、静岡県南伊豆町の河津桜を見に行くことになりました。当然、社中の旅ですので、お茶事を、ということに話は運び(実は遊ぶことばかり考えていた私だったのですが)熱海池田屋別館『西紅亭』で正午の茶事を催しました。当日は早朝から雨どころか雪模様。着物を着るのに、どうなることやらと心配しましたが、昼には雨。その雨が西紅亭のお庭をいっそう美しく見せてくれたかのようです。きれいに剪定されて枝ぶりもみごとな梅が咲き誇り、そこここの竹は雨に静かに揺らぎ、足元の苔はもうすぐそこまで来た春を待つかのごとく、ひっそりと息づいていました。
 さすがに海のものが美味しく、懐石も順調に運びました。お菓子は鶴屋八幡の薯蕷でした。蒸したてで、心尽くしに芯まで温まったような、気がします。再び寄り付きで、お庭の風景を堪能してから、席入りしお茶をいただきました。
 翌日は、打って変わって気持ちの良いお天気になり、河津川に沿って咲く河津桜を見物。河津桜は、桜色というより桃の花の色のように濃く、若干大きめのような気がします。土手には、ところどころに菜の花も咲き乱れ、もうすっかり春の気分です。沿道には所狭しと売店が出て盛況。花より団子と、ついあちこち目移りし、桜海老やら、お菓子やら、買い込んでしまったのでした。
 また近くの、東伊豆町稲取温泉では古くから、おひな祭りのときに、ひな壇の両脇に、一対のつるし雛を飾る風習があったそうです。この時期、いくつかの会場で、雛まつりのつるし飾りが展示されていました。河津桜が桃色なので、ちょうど、この雛飾りにぴったりのような気がしました。雛壇飾りの上から、赤ちゃんのベビーベッドの上のオルゴールのような形になった、はぎれで作った小さなぬいぐるみを連ねたものが垂れ下げてあり、それはみごとなものです。江戸時代から伝わる風習で、同じような飾りは、山形県酒田市と福岡県柳川市に伝わっているそうです。山形と静岡と福岡、そこにどのようなつながりや交流があったのでしょう。遠くに嫁いだ方が伝えたものでしょうか。親から子へと歴史を刻んだ、しかも手作りのお雛飾りは、人の温もりと愛情がたっぷりで、それはそれは贅沢な印象を受けました。 
 社中の方で、この地元からお稽古にいらっしゃる方から、お友達が創作したとのことで、桜祭りにちなんだ羊羹をお土産にいただきました。さっそく静岡掛川の煎茶と一緒にいただきました。羊羹は桜の葉とワインを入れて作ったそうで、桜餅のように葉の香りが口の中で広がります。掛川のまろやかな風味のお茶が、ひと味違ったこの羊羹の風味を引き立たせるかのようでした。
 花めぐりの旅から帰宅して、梅の香りや桜の葉の香りに触発されたのか、友人のシンガポールのお土産、花のお茶をいただきたくなりました。Pink Rose Buds、Jasmine、Sunflower Blossom、Hibiscusなど、花や果物をお茶にして飲むようにセットされたものは、見ているだけで優雅な気分になってきます。中でもPink Rose Budsは、中国茶のメイクイ茶よりもピンクがかっているようで、少し違っているのかしら、と心惹かれていただくことにしました。安渓鉄観音に、このPink Rose Budsをいくつか入れてみました。柑橘系のような蜜のような、ほんのり甘みのあるお茶に、花の香りが融けあって、外は名のみの春ですが、束の間すっかり春のような気分でうっとりとした時を過ごしました。

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