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茶の間 菓子の間
     
お茶とお菓子の間をとりもつティータイム。仕事の傍ら、お茶に魅せられてアジアの茶場を探索する広岡さんは、菓子通としても知られ、お茶をみつけたらお菓子、お菓子があればお茶を、と常にマッチングを愉しんでおられるとのこと。日頃の愉しみ方からおもてなしのアイデアまで、ジャンルやスタイルを問わず綴っていただきます。
 
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茶の間菓子の間

 何か自分の中で「あ!」と驚いたり面白かったりするようなことが起こると、不思議と、そのことに連動するかのように、関連する事柄が次々と起こるような気がするものです。今回の「あ!」は、西アジアでした。
 知人から、トルコのお土産のお菓子を戴いたのに続いて、お茶の同人からパキスタンのお土産のお菓子をいただいたのです。どちらも、いろいろと想像を掻き立てられるような面白さに充ちていました。
 トルコのお菓子は、まるで縁日で出会う綿菓子のように、糸状になった砂糖が、お饅頭のように固められたお菓子です。手で取ると、ふわふわ、ほろほろと、崩れてしまうような柔らかさ。何より、糸を引くような砂糖の形状と、それを饅頭のように丸くまとめているところが面白い。口の中で溶ける砂糖のような感触は、ほんとうに綿菓子そのもの。ただ、砂糖の繊維が、しっとりとして太めなのです。綿菓子と違う点は、バニラのような香料がきいていて、こっくりとしたミルクのような香りがすることでしょうか。パッケージには、『TRADITIONAL FLOSS HALVA』とあり、
要するに繭の表面のけば繊維、繭綿状態になった、伝統的な菓子ハルワであると。一般にハルワとはペルシャ語で砂糖・油・粉で作った砂糖菓子のことだそうで、すりつぶしたごまやナッツをシロップで固めたお菓子、とのこと。ラマダン明けに、この甘いお菓子を、家族や友人に配り、皆でいただくと聞きました。神や家族への感謝の気持ちの高まる時に、甘いお菓子が、それを仲介する意味があるのかもしれません。
 そしてやはり、パキスタンのお土産のお菓子も、『MULTANI SOHAN HALWA』とあり、これはまさに、砂糖・油・粉で作ったお菓子そのもののようです。風味は、しょうが。「しょうがのハルワ」とでもいうような感じです。ねっちりとした感触で柔らかいキャラメルのよう。ハルワにも、いろいろ種類があるのかもしれません。パキスタンの中でも、杏の花で有名なフンザを訪れたときに求めたもののようですが、その場所が、しょうが味が多いところなのか、たまたましょうが味だったのかは、わかりません。真ん中にアーモンドのようなナッツの薄切りが乗っているのが、唯一のおしゃれ、といった風情です。
 パキスタンのお菓子ではありますが、「MARIAGE FRERES」で求めたトルコの紅茶「RIZE OP」と合わせてみました。リゼは黒海地方で作られる高級なオスマントルコの紅茶、とあります。お店の方の説明では、BOPもOPもさして変わりはないので、BOPで十分ですよ、とのことでしたが、あいにく切れていたようで、OPにしました。トルコの紅茶ということで、どろっとしたトルココーヒーを思い浮かべてクセのある紅茶を想像していましたが、まったく違いました。ほのかな甘みが、まろやかです。かすかに果物のような酸味もあり、ザクロのような風味を感じる、とても繊細なお茶でした。
 トルコに旅行した人たちは口を揃えて、紅茶も甘かった、お菓子も甘かった、と言っていましたが、ストレートで飲むトルコの紅茶は上品でまろやかでした。
 東西文明の狭間に位置するトルコ、アジアの西の端に位置するパキスタン、この地域のお菓子やお茶をいただきながら、以前大学のときの先生が紹介してくれた本や、一昨年古い友人が貸してくれた本などを思い浮かべていました。
 大学の先生が昔、紹介してくださった本『アンジェリク』(S&A・ゴロン 井上一夫訳 講談社文庫)は、17世紀のフランスで貧乏貴族に生まれた主人公がたどる数奇な運命の物語。フランスから地中海、トルコからアラブ世界へアメリカへと広がる壮大なスケールの物語に、夢中になったものです。
 そして尊敬する古い友人は『千年医師物語』3部作。『气yルシアの彼方へ』『シャーマンの教え』『。未来への扉』(角川文庫 ノア・ゴードン 竹内さなみ訳)を紹介してくれました。暗黒の中世11世紀のイギリスから中東世界へアメリカへと連なる千年の物語は、孤児となって生まれた主人公が、過酷な世界へ放り出され生きていくうちに、自分に備わった不思議な能力に気づき医師としての自分に目覚める物語が、代々千年続いていきます。どちらも、綿密な歴史の知識をもとに、人間の愛や宗教や社会問題までをも深く掘り下げ広げている点、そして何より中東の文化についての描写が共通しています。
 トルコでは、チャイハネという喫茶店で、健康でいられ、おいしいお茶を飲めることの喜び、<あなた>に出会えたことの喜び、今日一日幸せであったことの喜びなどの思いを込めてお茶を飲むのだそうですが、私も、読んだ本やそれについての感動を語ってくれた先生や友人、お菓子をくれた友人知人との出会いと、そこから広がる世界に感謝しながら、トルコの紅茶で久しぶりにゆっくりと過ごすことができたのでした。

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