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茶の間 菓子の間
     
お茶とお菓子の間をとりもつティータイム。仕事の傍ら、お茶に魅せられてアジアの茶場を探索する広岡さんは、菓子通としても知られ、お茶をみつけたらお菓子、お菓子があればお茶を、と常にマッチングを愉しんでおられるとのこと。日頃の愉しみ方からおもてなしのアイデアまで、ジャンルやスタイルを問わず綴っていただきます。
 
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茶の間菓子の間
 
 ことのほか寒さ厳しい中、季節はずれの杭州に行ってきました。杭州は上海より150kmほど南西に位置し、現在中国一の経済成長率を誇る浙江省の省都。中国七大古都に数えられ、歴代の詩人たちが、詩に詠んだ美しい都市でもあります。宋の詩人「蘇東坡」も絶世の美女にたとえて詠った西湖を囲むように広がっています。
杭州を訪れたのは2度目ですが、前回は9月の蒸し暑い盛り。西湖の蓮は、終わりを告げていました。今回の蓮はそのときより、さらに枯れた姿でしたが、それはかえって夕暮れのうす紅の光に映えて、心落ちつく風景であるように思え、岸に打ち上がるさざ波の音だけが、静かに聞こえてくるのでした。
 到着した日の午後、『青藤茶館』を訪ねました。入り口からは想像できないほど広い店内には、各種のタイプの席が1000近くあるといいます。そのほとんどが埋まり満席状態でした。店内には、家族連れ、カップルなどが、テーブルに置ききれないほどのお茶請けをどっさりと並べて、お茶を飲み、おしゃべりをする、喧騒と言っていいほどのにぎわい。しかも、店内は照明をかなり落としてあり、トイレを探すのに苦労するほど、ほの暗く、おしゃれな雰囲気の作りなのです。50元からの値段のお茶を注文すれば、後はビュッフェ形式に並んだお茶請けが、食べ放題だからでしょうか。その中には、若いカップルが、お茶をと碁盤を前にして静かに向き合っていたり、お年寄りから赤ちゃんまで大勢で連れ立ってきた家族がいたり、と、日本では若者と大勢の家族連れが同時に同じ場所にいるということが少なくなっているからか、いろいろな人がそこで楽しんでいる、というそのバランスが不思議で、おもしろく感じました。中国の人の多様さ、時間の過ごし方の奥深さを、ここでも思い知らされるよう思いです。
 翌日には、杭州から車で1時間半ほどにある、水郷の町「烏鎮」を訪ねました。宋の時代に栄えた、古い木造の町並みを歩きながら、初めての場所、知らない時代だというのに、ある種懐かしさを呼び覚まされるような感覚でした。いまだに老人たちが住んでいるという家々の戸口の奥には、昼時のご飯や、お茶が置いてあるのが垣間見えました。また運河沿いの茶館では、近所の人たちがトランプに興じながら、やはりお茶を飲んで時間を過ごしているのです。いつでも、どこでも、きっと古から、変わらない風景なのでしょう。この町を歩いているとき、道々サトウキビを運んでいる風景に出会いました。ガイドの張さんは「この辺りでは、おやつに、サトウキビを、噛るんだよ」と教えてくれて、その場で買い求められないことがわかると、昼食のレストランで、デザートにサトウキビを頼んでくれました。ということで、ここでのお茶請けは、サトウキビとなりました。食べ切れなかった分についても、張さんは「持って帰って食べなさい」としきりに勧め、車内でも「もう食べきったか?まだか?」と気にするのです。サトウキビに、そんなに感激したわけでもなかったのですが、きっと張さん大好物なのか、思い出の食物なのかな、と思いながら、ありがたく、その親切を受けたのでした。しかし、原稿を書きながら、ふと後になって思い起こして考えてみると、もしや私は「サトウキビをそのまま、食べたことがない」と言ったのかもしれません。そして張さんは、その言葉を、覚えていてくれたのかもしれません。今では烏鎮では、お茶ではなく、サトウキビが思い出となってしまいました。しかし、あんなに気にしていてくれていたのに、私は途中で車を換えた際、置き忘れてしまいました。なんだか、最後はさえない思い出のサトウキビだったのです。張さんは、欲張りな希望ばかりを言う私に、時間がない時間がないとばかりに、せかします。烏鎮の茶館でお茶を飲みたかったのに…。もう一度行くことがあるなら、どんなに時間がないと言われても、今度こそ水郷の畔の茶館で日がなお茶を飲み、トランプをしてみたいなどと思っています。
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