|
友人から韓国旅行に誘われて、初めて韓国を旅してきました。以前、在日本韓国YMCA国際文化部というところで、韓国の伝統茶芸についてのセミナーがあり、受講したことはあったのですが、今回現地では、伝統茶芸に出会うことになるのでしょうか? 実はお茶のための旅ではなかったので、どのようなお茶に出会えるのかと期待を胸に出かけました。
さっそく仁寺洞(インサドン)の茶館で、五味子茶(オミジャチャ)と、花梨茶(モグァチャ)をいただきました。五味子茶とは、五味子という赤い木の実を甘く煮込んだお茶。さっぱりとした酸味があります。花梨茶は文字通り、花梨の実のシロップ漬けを煎じたお茶。どちらも、ほんのり甘く、疲れた身体に、スーっと沁み入るような優しい味わいでした。一緒に出てきたのは、通りの店でも見かけた、菓子。伝統茶芸セミナーでも紹介された菓子で、韓国では定番のものです。外側には粟がついていて、サクっと噛んだ後もっちりとした食感のする餅菓子です。
夜の食事の最後に出てきたお茶は、梨茶(ぺチャ)。梨のシロップ漬けを煎じたもの。また別の日の宮廷料理の最後は、果物と梅茶。ほのかな酸味のある、やはり甘いお茶でした。
宮廷料理でおもしろかったのは、石釜の中のご飯のこと。ご飯は、石焼ビピンバと同じように、おこげができていて、そのおこげを残しておいて、ご飯は別の器に盛って、いただくように、というのです。残ったおこげのこびりついた石の器の方に、ほうじ茶のようなお茶を注ぐのです。それが、「おこげスープ」と言われるもので、それが好物だと言う人も多いと聞きます。朝鮮王朝時代、仏教がすたれた頃、緑茶を飲む人が少なくなった時期があり、緑茶の代わりに、おこげを湯にといたもの「スンニョン」が、人々の間でも飲まれていたそうです。その「おこげスープ」に遭遇して私は、日本の懐石料理の中でも、似たものがあると、思い出したのです。おこげに湯、または薄味をつけた出汁をかけたものが、湯桶と言われる漆器に入れられて、供されます。それを、順にそれぞれ自分で、残ったご飯が入った椀に注ぎ、香の物と一緒にいただくのです。が、私は、懐石も後半に差し掛かったこの段になると、ほっとするような、しかしまた、器を清めることに一生懸命な感じになり、ゆっくりとご飯をいただけないのが惜しいような複雑な気分になるのです。懐石では、ご飯ではなく、米を煎ったものをお粥のように煮たものであることが多いのですが、この、「おこげに湯をかけて」というところが、韓国宮廷料理のご飯と、あまりにそっくりで、もしかして、茶道、少なくとも懐石料理というものは、中国ではなく朝鮮から伝わったものであるのかなあ、とも思われたのでした。
織田信長の時代に宣教師として来日した、ルイス・フロイスが、きっと織田信長とも茶を共にしたのでしょう。書き残した書物の中で『日本では、おこげは、食後の果物である。おこげは、最後に飲む湯の中に投ずるのである』と。そして日本の宮廷社会では、おこげは、価値あるものとして扱われていたと、記されているそうです。お茶にまつわる話ではないのですが、宮廷料理や茶席の懐石料理が、どこかで繋がっているのかもしれない、と、これまた、勝手な憶測をして楽しんでみました。
今回は、伝統茶芸とは別の、お茶の葉に代わるお茶。その土地で伝えられた、・土郷茶・土俗茶とも呼ばれるお茶について現地で体験してみました。その昔、韓国の国交使節が唐からお茶の種を持ち帰ったといわれる828年より以前から庶民の間で飲み継がれてきた飲み物です。以前、新大久保のお店でコーン茶を購入したことがありますが、それも、土俗茶の仲間でしょう。このほかにも、たくさんあり、紹介しきれないほどです。
さらに828年に伝わった緑茶が、その後、どのように韓国に根付いていったのか、また、伝統茶芸と歴史との関わり、薬膳や健康志向の韓方のお茶など、韓国のお茶の話は、まだまだ、続きが必要なようです。
|