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茶の間 菓子の間
     
お茶とお菓子の間をとりもつティータイム。仕事の傍ら、お茶に魅せられてアジアの茶場を探索する広岡さんは、菓子通としても知られ、お茶をみつけたらお菓子、お菓子があればお茶を、と常にマッチングを愉しんでおられるとのこと。日頃の愉しみ方からおもてなしのアイデアまで、ジャンルやスタイルを問わず綴っていただきます。
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茶の間菓子の間




 2006年の酉の市は三の酉までありました。その三の酉に、江戸時代から続いている という浅草鷲神社の酉の市を訪ねてみました。例年に較べて、ずいぶんと暖かく感じる酉の市ではありました。
 境内に入るまでが大変な混みよう。人波に押されるままに、流れていくと自然に境内へと導かれる仕組みです。鳥居をくぐってすぐ右手の露店が、お目当ての「切山椒(きりざんしょ)」の店。正月用の餅菓子として商われてきたそうです。おめでたい色模様の袋に入って並んでいました。
 切山椒は、上新粉の餅菓子で、餅に砂糖と山椒の粉を加えて搗き、薄く延ばして短冊形にしたものです。この店もそうでしたが、薄桃色や、黄、緑、小豆色のものが組み合わさっています。ほの甘さとともに、山椒のピリっとした味わいが不思議な取り合わせですが、他にない味である点で、何か捨てがたい味でもあります。
 なぜ暮れに、山椒が使われるのかといいますと、山椒は葉や花や実や樹皮は食用として、さらに幹は、すりこ木や杖として使われ、すべてが無駄なく利用できるからだそうで、「役に立つ・有益である」との縁起の観点から使われるようになったということです。
 もうひとつ、その奥にあったのが大きな芋「八頭(やつがしら)」の店。頭の芋(とうのいも)と呼ばれ、一つの芋からたくさんの芽が出ることから、やはり「子宝の恵まれる」という縁起から商われるようになったものです。昔は、これに加えて「黄金餅(こがねもち」と言われる粟餅が売られていたそうですが、こちらは見かけられませんでした。
 境内を出ても露店がいっぱい。境内の外でも「切山椒」の店は何軒か見かけられました。ごまが入ったものや、唐辛子のもなど、多少趣きが違いましたが、この時期ならではの店でした。
 さて、年が明けてからも山椒が登場する機会があります。お正月の「お福茶」です。お正月のお屠蘇の後にいただくお福茶、または茶道の初釜で、いただくお福茶、節分にいただくお福茶など。お福茶そのものは、おめでたいときの節目に飲むお茶というような意味合いです。白湯や煎茶の中に「結び昆布・梅・山椒の実」、「玄米・昆布・梅干・勝栗・黒豆・大豆・山椒」や「黒豆・小梅・山椒の実」などというように組み合わせは、さまざまですが、だいたい以上のようなものを、取り合わせたお茶を「お福茶」と称しています。年末だけでなく年始にも、そしてお菓子だけでなくお茶にも、山椒は登場するのですね。意味合いは、きっと、同じような「役に立つ・有益である」という縁起と、ピリっとした味わいが年始に気持ちを引き締めるからかもしれません。
 お正月に頂くものとして、もう一つ「お屠蘇」。お屠蘇は、もとは山椒のお酒が始まりだったということです。そもそもは中国が始まりで「「蘇」という悪鬼を屠(ほふ)る」という意味なのだそうです。1年間の悪を祓い、長寿を願うものでした。それには山椒の花を浸したお酒「椒酒」が用いられていたのですが、時代を経て、いろいろな薬を合わせたものに変化していったそうです。
 となると、もしかして、お福茶は、お屠蘇が変形したものなのかもしれません。それで、お福茶にも山椒を入れるのでしょうか。
 小金井の「三光院」では、節分に、鉄釜の湯に、炒った大豆と小豆、そして山椒に実を入れて沸かし、皆でいただきます。そのとき、それぞれの湯呑みに、大豆か小豆か山椒か、それとも組み合わさって何が入っていたかで、運だめしを行なうのだそうです。大豆は(まめで)、小豆は(達者で)山椒は(いさんしょう)という意味と語呂とを掛け合わせたようです。お湯呑みの中に何が入っているかお楽しみ、といった遊び心が添えられたお福茶です。
 昔、年明け早々のフランス。チーズ市場の2階の事務所で、フェーブ(そのときには鉛の人形)が入ったケーキを切り分けて誰に当たるかと遊んだことを思い出しました。あの「ガレット・デ・ロア」にも似た、お遊びですね。
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