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茶の間 菓子の間
     
お茶とお菓子の間をとりもつティータイム。仕事の傍ら、お茶に魅せられてアジアの茶場を探索する広岡さんは、菓子通としても知られ、お茶をみつけたらお菓子、お菓子があればお茶を、と常にマッチングを愉しんでおられるとのこと。日頃の愉しみ方からおもてなしのアイデアまで、ジャンルやスタイルを問わず綴っていただきます。
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茶の間菓子の間




 愛知県豊田市足助町では、なんと冬の一番寒い時期、大寒の頃に、茶葉を摘み、茶を作る、というので訪ねてみました。2007年の大寒は1月20日。地元の方によれば例年に較べると、雪など降らずにすみ、穏やかな天候に恵まれたとのこと。足助という地名は、聞きなれなかったのですが、実際に訪ねてみてわかったのは、紅葉で有名な香嵐渓だった、ということでした。季節はずれではありましたが、紅葉の頃にはさぞかしと思われる風景でした。
 もともと足助の山里では、昭和の初め頃まで、谷間で育った野生の茶の木から葉を採り、お茶を作っていたのだそうです。「寒茶」というのは、大寒の頃に作ることからついた名前とのこと。残念なことに、今では寒茶を作る農家は、ほとんどないそうですが、足助の「三州足助屋敷」では、消えてしまった山里の文化を残そうと、寒茶フォーラムと称して、毎年この時期、実際に寒茶づくりを体験させてくれるのです。
 近くの山まで、車で10分ほど。そこに茶の木が栽培されています。山の上から川が流れている谷間に向かって降りていく感じで、かなりの斜面です。周りには漆の木、 桑の木、けんぽ梨などがあり、山の中にある野生の茶の木で作っていたのだということがよくわかります。林の中に茶の木があるということは、遮光の代わりになるとのこと。茶摘みは、なんと枝ごと採取するのです。春の新芽も摘まず、秋にも整枝をせずに、自然のまま育った茶の枝を、木の株の根元から10cmほど上の位置でハサミで刈り取ります。急な斜面なので、けっこう大変な作業です。刈り取ったその枝を、大きな樽に枝ごと入れます、この時、生えていた時と同じ向き、枝を下に葉を上にするようにして縦に揃えて入れ込みます。大きな樽を火にかけセイロ状態にして30分から1時間ほど蒸し上げます。この日は葉の量や天候の関係で、30分ほどで蒸しあがりました。枝ごと蒸したものは、枝を振っただけで、茶葉が取れてしまいます。葉っぱがパラッと落ちるまで蒸すのが足助流、なのだそうです。その茶葉を揉まずにそのまま2日ほど天日干しにし、その後日陰で2〜3日干して出来上がりです。この日の茶葉は持 ち帰ることができました。後日各自の家で干し、それぞれの足助寒茶ができあがるというわけです。
 この日は、すでに出来上がっていたお茶をいただきました。大きなやかんに茶葉を入れ熱い対湯を注いで、少しの間待ってからが丁度いいそうです。渋みはなく、ほんのりとした甘みを感じます。茶の葉は冬には防寒のために、秋から同化澱粉と多糖類を蓄えるため、寒茶には甘みがあると言われています。青っぽいような茶葉の香りも して、懐かしいようなさっぱりとした素朴な味わいでした。地元の方は、足助の寒茶は、枝ごと持ってきて、そのまま蒸すので、柔らかい味がするのだ、と話していました。
 昔は、山仕事をするときなどに寒茶を飲んだそうなのですが、実は自分のところの お茶の方がおいしいということで、山仕事の先のお茶の木ではなく、それぞれ自分の家のお茶の木を枝ごと背負って山に行き、お茶を淹れて飲んでいたそうです。その雰囲気を味あわせてくださる、ということで、摘んできたばかりの茶葉を枝ごと、火がつくくらいに炙って、枝ごと丸めてやかんに入れ、お茶を出してくれました。あぶった茶葉は、テリが出て香ばしく、また茶というより、みかんの葉のような香りもしました。お茶は、寒茶より、さらに青っぽい感じでした。
 ここで、珍しいお菓子に出会いました。その名は「ぼろ」。お茶を干していた傍に、うす桃色の小さなお餅を乾燥させたようなものがあったのですが、それは、昔から、この地で食べられていたものだそうです。お餅状になったもち米に、生の里芋と砂糖を入れて搗いたものを、小さく千切って乾燥させます。干したままでも食べられ ますが、あぶり器で炒るようにすると、かき餅のように先ほどよりも多少ふくらみま す。里芋が入っているせいか、かき餅よりも、柔らかく、もっちりとしてグミに似た感触でした。また「すはま」のように少し甘みがありました。フォーラムでお話をしてくださった河合博美さんによれば、昔はどの家でも作っていたのだそうです。子どもの頃には、我が家の「ぼろ」ではなく、よその家に干してある「ぼろ」を、つまんで食べることが、よくあったそうです。それは、「なんだか、よその家の<ぼろ>の 方が無性においしそうに思えたから」だそうで、古今東西変わらぬ子どもの気持ちが伝わってくるようでほのぼのとした微笑ましいエピソードでした。
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