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久しぶりに奈良へ行きました。奈良に限らずとも、旅の楽しみは土地のお菓子。店先にその土地ならではのお菓子が並んでいると買わずにはいられないもの。店づくりに関わるはしくれとしては、おのずと決まってきてしまう店や商品を見る視点を、リフレッシュさせる目的も加わります。二つの視点を交互に意識しながら、印象にのこるフレームをふりかえると、季節や風景に重なる菓子のパッケージ、菓銘、味・香り、手にしたときの存在感などはもちろん、店のデザインやショーケースの豪華さよりも、商品をきちんと陳列する奥ゆかしさ、店の人のさりげないした一言、奥の工房へ続く陰影などがいつも見えてきます。
さてさっそく、奈良のお菓子。古都奈良には、飛鳥・天平時代に到来した文化のエキゾチックがひしめいていますが、その魅力は仏像ばかりでなくお菓子にも。
その一つが「ぶと饅頭」。その原型である「ふと」は、下賀茂神社や春日大社の神饌であるお菓子です。奈良に遣唐使がもたらした唐菓子の一つで平安時代に盛んにつくられたといいます。
図誌で見るとまさに「餃子」そのものなのですが、「萬萬堂通則」がつくる「ぶと饅頭」は、小さなピロシキ型で、握った手のような楽しさもあります。あんドーナツというよりも、あっさりしたこし餡が上品な味、時空を超えて、現代人の舌に会うお菓子になっているのが頼もしい。キャンデー包みという発想も、和菓子のパッケージとしては斬新かもしれません。
もう一つ、「幻の絹」というお菓子を見つけました。奈良町にある「なかにし」の創作で、パリンパリンの干菓子。香ばしく煎った小豆粉がたっぷりまぶしてあり、箱を開けたとたん、思わず遺跡から発掘されたばかりの羽衣をイメージしました。砂糖と寒天と卵白を煮詰め、削いだものを乾燥させてつくっているとのこと。
寒天がゼラチンならマシュマロですが、日本風につくるとこんなに優雅なお菓子にも変身するというモデルになりそうです。
奈良は歴史もありそれだけ物語も豊富ですが、どんな土地にも訪れる人に伝えたいストーリーがあると思います。それさえコンセプトと決めてイメージを創っていけば、お菓子やパッケージが多少が型破りであっても、案外、目に入ってこないもの、むしろ自然なメッセージとなりうるものと思います。買い手が商品の背景をすんなり読み取ることができる商品、であればよいのでしょう。
それにしても唐菓子のカタチは解せません。「ふと」はギョーザではなく、「伏兎」とも書き、兎がうずくまった形を示しています。「索餅」は麦縄、今の素麺の原型。「梅枝、桃枝」は、大切にされてきた木と想像します。
しかし「かっこ」は幼虫のかたち、「臍黏(てんせい)」はへそ…、なぜお菓子にこのカタチ?
古代の祭壇に供された菓子は、もっと自由で、アニマの宿るものであったのかもしれません。唐菓子の絵図を思い出しながら春日の森を歩いていると、せんべいを求めて鹿がやってきました。山の神々は今よりもっと素朴で、遊び好きだったのでしょうか。
■「萬萬堂通則」奈良県奈良市橋本町34
TEL:0742-22-2044
http://bb.bidders.co.jp/manmandomichinori
■「菓子司 なかにし」奈良県奈良市脇戸23
TEL:0742-24-3048
http://www.naramachi.jp/
(text & photo by 田中晶子) |