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今アンゼン・パックスが注目する、和菓子業界の新しい動き。
その最前線にいるキーパーソンの発想とは。
新しい和菓子のムーブメントの裏側にあるサムシングに迫る。
前編に引き続き、新しい日本文化とは何か?という視点から
和菓子の世界に入られた「HIGASHIYA」の亭主、
緒方慎一郎さんにお話をお伺いします。
 
VOL.1-後編
菓子、新し。 前編 後編 「HIGASHIYA」亭主緒方慎一郎さんに 聞く。
 
  商業施設のデザインに関わった後、今の時代の日本文化の創造をコンセプトに東京・中目黒に和食レストラン「HIGASHI―YAMA Tokyo」を開店。2003年には茶房を併設した和菓子店「HIGASHIYA」を、桜の名所、目黒川沿いの民家を改装してオープンさせる。シンプリシティ代表/クリエイティブディレクター
 
菓子屋の理想と現実。
尾関 和菓子とは全然別の世界からいらっしゃって、一番難しかった点はどこですか。
緒方 これは、私の考えなんですが、舌だけで感じるおいしさってありえないと思うんですね。おいしさってやはり五感で感じるものでしょう。ですから風合いですとか、カタチですとか見たり感じたりする要素が重要だと。ですから、その辺を大切にしてやっているんですが、現実はそうばかりも言っていられない。パッケージも最初アンゼン・パックスさんに、セロファンやプラスチックは一切使いたくないってお願いしたんですよね。でも実際、無理(笑)。だからできる範囲で、経木を使ったり紙を使ったりしてますが、プラスチックに頼らなければいけない部分もでてくる。実際、日持ちさせなきゃいけないと考えると、エージレス入れてパックして、二週間位もつ商品を作らないと商売にならないなと、悩んでるんですよ(笑)。正直言って矛盾がすごくあるんですが、できるだけ理想は貫きたいなと。
尾関 そのあたりは悩ましいところですね。あと、菓子屋さんって、売り場をどこに置くかで一番悩んでいるんですよ。百貨店だと販売経費もかなりかかる。ターミナルはよく売れるけど、土産型になってしまう。直営店を構えるには費用がかかりすぎる、どうしようと。
欲しがるものは感動みたいなもの。
緒方 確かにギフトという視点からすると、現状では百貨店の売り場は大きいですよね。やむを得ない売り場なのかなとは思います。ただ百貨店にはいろんなカラーがありますし、つきあい方もあると思うんです。HIGASHIYAも昨年、松屋さんの催事に参加させてもらいました。ちょうど江戸開府四〇〇年ということで、江戸時代からある和菓子屋から今年できた和菓子屋までを一堂に会してという企画でした。松屋さんは、本当に良いものを紹介するというスタンスで昔からやってこられているんで、大切にしていただけるのかなという思いがありましたし、やってみてすごくよかったです。
ただ、今は消費者が自分の価値観でモノを選んでる時代ですから、決してブランドを優先しているわけではないと思うんです。欲しがってるのは感動みたいなものなんですよ。高くてもおいしいものは買う、高くてもいい旅館には泊まる、そんな生活者の変化に百貨店が応えているかという疑問はあります。だから理想を言うと、やっぱり直営店で良いものをきちんと出していくのがベストでしょうね。
尾関 これからの時代、消費者は和菓子を買ってくれますかね。
緒方 和菓子とか洋菓子とかいう分け方は、本来おかしいすよね。和菓子って洋菓子が入ってきたから体裁上名前つけただけだし、もともと日本にあった日本のお菓子です。洋菓子も、日本の中でアレンジして作り直した日本のお菓子だろうし。だから和菓子だから洋素材使っちゃいけないってことはない。今後どんどん和とか洋とか、区別しなくなっていくだろうと思いますよ。うちだって和風かというと、私はこれが和風だと思っていますけど、結果としてデザインを含めて洋の部分もいろいろ取入れています。ただマインドとして日本の美学のようなものは持っていたいと思ってますけど。
尾関 その辺のお話は、今後の和菓子業界にとって重要なポイントですよね。
和菓子の新しいスタイルを。
緒方 例えばある程度歴史があるお店でしたら、先祖の作ってきたモノを受け継ぐのはすごくプレッシャーがあると思うんです。自分が変えて悪くしてしまったら、とかね。私なんかは何もないからやりやすい。老舗のブランドというのは、昔からの部分を守らなければいけない。でもそのためには、新しくならないといけないと思うので、挑戦もして欲しいなと思います。やはり流行があるからそれが定着して伝統になるし、伝統的なものがあるから違う流行が時代時代にできてくるのだと思うんです。そのためには経営者が今の時代の流行を知らないとできない。ファッションがどうであるとか、音楽は何が流行っているかとか、べつに和菓子のことじゃなくていいと思うんです。技術も味もしっかりした基盤があるのですからあとはマーケティングでしょう。
 あと異文化の中にも答えはあると思うんですよね。海外にも行って、全然違うものも見て、食べて、感じて、なんか違うなとか。いろんな視点から意識して今を見ていくと、今後こうしなくはいけないという部分も、見えてくると思うんですけどね。
尾関 最後に緒方さんがはじめたことの評価はなんだろうなと考えると、新しいスタイルの提案性だと思うんです。ここ最近和菓子の世界は、甘みがどうだとか値段が安い菓子だとか、出尽くした感がある。
HIGASHIYAさんの在り方を見て、新しいスタイルだからこそ、和菓子を心から満足して食べられるという提案があったんだなと思い知らされました。本日はいろいろなお話をお聞かせいただいて大変参考になりました。本当にありがとうございました。
この記事は製菓製パン2004年3月号に掲載されたものです。
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