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「HIGASHIYA」亭主緒方慎一郎さんに 聞く。
 
  パン屋を出発点とした先代からの社業を預かったのは28歳。以後、現在の「浦田甘陽堂」を碓立する過程には、二代目としての試練の時代があった。昭和40年の工場火災を期に、観光土産店より地元金沢で愛される菓子舗へと方向を転換、数多くの名菓を生み出し、近年の全国名菓加盟に至るまでに同店を成長させた。
尾関 本日はおめでとうございます。
 今回オーナーシェフとなられたご子息は、福岡で大変に厳しい修行を積み、さらにパリで研鑽してこられ、そして今日、金沢でオープンなさり大変喜ばしいことです。一方社長としては大変難しい決断でもあったのではないでしょうか。
浦田  はい、悩んで夜眠れないこともありました。息子が個人で洋菓子屋をやるのは自由ですが、会社としてどう洋菓子店を位置付けるのか。
 一方で現状を分析すると、時代の変化とともに生活も大きく変わってきています。時代の主役は誰なのかと問うた場合、これからは団塊世代、団塊ジュニア世代であり、そんな風に消費構造も全く変わってきている、といろんなことを考えながら店づくりを考える必要もあります。
 私自身は和とか洋とか区切りをつけるべきではないという想いは前々から持っていましたが、今一番の想いは、“和菓子屋があって洋菓子屋がある、洋菓子屋があって和菓子屋がある”ということです。和洋の技術や材料の交流をはじめ、いろんなコラボレーションを考えた時、それがこれからの一つの強みになっていくのではないか、そういうとらえ方をして、株式会社浦田甘陽堂として洋菓子屋も共にこれからやっていこうという決断をしました。
尾関  今日はじめてお店を拝見して設計といい、雰囲気といい、実に金沢らしい洋菓子屋さんだなという感じがしました。お店へのこだわりは、結構、“和”ですよね。それと新しいブランド「ラクアジュール」は、多分、造語なのでしょうか。そのあたりのコンセプトについてお聞かせ下さい。
浦田  ラクアはアクアという水のこと、アジュールというのは紺碧や群青、さらに幸運の意味もあるので、それらを一つにして「ラクアジュール」と覚えにくい名前となったのですが、最終的には水にこだわり、金沢の文化にこだわり、そしてお菓子にこだわっていくという考え方を理解していただければありがたいと思っています。
尾関  まさしくお菓子にとって原料と水は命ですからね。地元、白山の恵みのおいしい水と文化をテーマとした店名、なかなかすばらしいですね。
浦田  東京のデザイナーの方に金沢のいろんなところをみていただいた際の印象として、格子、廓の朱色やべんがら色、成巽閣の「群青の間」があり、中でも〈群青〉が金沢の強烈なイメージとして残ったようです。そこから店名、そしてデザインも進んでいったのではないでしょうか。ですから店は和洋折衷、外から見たら〈和〉かな、中はすっかり〈洋〉だなと、とても調和のとれた店になりました。
 私はかねがね、店というのは、お菓子を買いに来るお客さまの〈人生の行事〉が主で、お菓子は補足的に付いてくるものと考えています。だから店の在り方としては、足を運んでいただける楽しみ、ほっとする癒しの部分を大切にしたい。そのあたりを今回、デザイナーの方に非常に上手く作っていただいたと思っています。
尾関  あと、お客さまからみて一番大事なお店のテーマとして『大人のおやつ、子供の贅沢』とキャッチフレーズをつけておられます。特に『子供の贅沢』というのは、小さい頃から本物の味をわかってもらいたいということですね。スローフードの時代となり、おいしいものを食べてもらえれば、反面まずいものもちゃんと選択できるわけです。ジャンクフードにしてもしかりですが、手抜きした商品が多い中、日常的だけどおいしいものはこういうものだよと両親を通して伝え、お子さんにもお菓子を選んでいただきたいということですね。
 さらに非常に深い歴史文化も食文化もある土地柄、難しく、厳しい消費者の金沢人に対して、今後どういうお菓子を作っていかれるのか、ラクアジュールさんのご計画の中になにかお考えがあるんでしょうか。
浦田 これは理想に近い面もありますが、特に和の材料や技術を入れたりすることでお互いに協力し合いながら金沢独特のお菓子を作っていきたいですね。長く食べていただけるお菓子をつくりたいです。
尾関 そういった点、金沢は恵まれた環境で、例えば加賀野菜とかいい食材がたくさんあります。俗に言う地産地消、地元で採れたものを地元の方のためのお菓子に活かしてゆけば大変素晴らしい出合いかなと思いますね。
 もう一つ、前々から御社のコンセプトである創作菓 浦田≠ニ、折にふれ≠ニいうこの二つのテーマ、大変素晴らしいなと思って、特に伝統工芸なども盛んなこの金沢にあって創作≠ニいう考え方があり、そういう上に今回の「ラクアジュール」が生まれたのかなと。
浦田 「折りにふれ〜創作菓子 浦田」は、創業50年を迎えた年に、次の50年に向けて再出発しようと導入しました。あえて創作≠ニいう言葉を入れたのは単にこちらが創作するということではなく、お客様のいろんな要望を聞いて、今の言葉で言えば、マイブランド、お客様のご相談を受けられるような菓子屋になっていけばいいのではなかろうかいうことです。
尾関 社長の代に「加賀舞づる」、あるいは「さい川」と銘菓を世に出され、そこにご長男の常務様が打ち出した「愛香菓」は金沢の菓子の新しいスタイルだなと僕は思っていました。創作≠フ意が浦田さんの商品の随所に現れて、今度のラクアジュールさんもぜひとも金沢にあっての新しい洋菓子店を目指していただければと思い、楽しみにしています。
 本日はお忙しいところどうもありがとうございました。
 
この記事は製菓製パン2004年11月号に掲載されたものです。
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