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春は“張る”から、その音がきていると聞いたことがあります。お正月に入れた梅の小枝の芽が日々ふくらむのを見て、ふと思いました。幼い頃、餅がふくらむのも不思議でした。あん餅など小豆が飛び出ないかとハラハラ心配したものです。
■ 小豆ぜんざい
そう言えば、我家はぜんざいをよく作りました。新学期の前日、誕生日、入試前夜もそうでした。吉の兆(きざし)か、お祝事か、赤飯の代わりであったのかもしれません。ちらし寿司もよく口にしています。春の若芽を入れていただくと長生きをすると話してくれていたのを覚えています。
その土地土地で随分と習慣は異なるものですが、何故?を考えてゆくと何かしら見えてくるものがあります。長く語り継がれた事や、歳時あってこその今の菓子。粉雪まじりの寒風の中、さくら餅の文字を見るだけで春の訪れを感じます。
■ ひなのお菓子
ぜひ、さくら餅とともに“ひいなの菓”も店頭のケースの中に並べておいてください。昔は、ひな形と呼ばれる紙の型に、身の穢れを移し、川や海に流すことで、厄よりのがれました。私達は、魚や果物、米など、そのものの命を絶ち、口に入れることで命をつないで歳をとってゆきますが、そのことで穢れが身体にたまってゆく事を恐れ、年に数回は穢れを落とすことが習いとなっていったようです。移し流す紙型は人形へ代わり、今では七段飾りのひな人形として楽しまれています。
■ 桃、蓬のニ色にこだわる
桃と蓬の二色の菓子を並べていただければ、さらによいと考えます。もともと左が上席でしたが、明治以降欧米に習い、右を上席としたこともお話ください。桃は厄よけ、蓬は無病を願った事から。串団子は中を白玉にして、桃、白、蓬の三色である意味なども、ぜひ店頭に立つ方へお伝えください。
当たり前の事だなんて思っているのは、菓子処のご主人のみかもしれません。
ひいなのニ菓にしても団子の三色の色にしても、ひちぎり餅にしても、いわれや説明を小さなPOPやしおりにしましょう。これこそ、郷土のお店同志で作れば、なお連帯感のあるものになるかと思います。
今年は群れてみませんか!まだまだ個の時代をがんばりますか。
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城戸翔寉 きどしょうかく
和菓子評論家、書家、企画コンセプター。福岡県出身。
和菓子と和菓子にまつわる歳時の話をわかりやすく解説する『和菓子講座』をはじめ、商品開発、店づくり、街づくりまでを手掛ける。 |