お節介がつなぐ和菓子の売り上げ

和菓子業界の売り上げが少し横ばい気味である。
コロナ禍が明けて昨年10月からかなり順調に推移しており、価格改定なども相まってだいぶ好調だったようだが、
コロナ禍の中でも専門店の和菓子は意外に売れていたので、通常モードに戻り1年経過すると、売り上げが伸びない原因が散見されるようになった。

全国で様々な業態の和菓子店があり、一律にとは言えないが分析してみると、概ね次のような感じである。
1.従来からの顧客層のメインが年齢の高い方々の和菓子店については厳しい。
2.冠婚葬祭や注文のギフトが多かった店舗は特に厳しい。
3.40代以下などの顧客層が比較的多い若いターゲットが増えてきている和菓子店は比較的堅調である。

ざっくりとした分析をするとこういったところだろう。

その中で売り上げが急落していて、早急に対策をしなければいけないと思われるのが、2の冠婚葬祭や注文についてのテコ入れである。
葬儀などが簡素になり、引き出物の菓子が非常に減ったという話は多く聞くが、その背景にあるのは家族や会社などのグループ、
地域の寄り合いといったところで、人と人とのつなぐシステムがかなり個別化してしまい、あまり機能しなくなったことにあるのではないかと思われる。

とある作家のコラムで読んだのだが、昔のお正月は一家の長老のような方がいて、皆がそのもとになんだかんだと集まり、毎年同じ光景が繰り返されるのが日常であった。今はそれが懐かしい、核家族となって、遠方から手間をかけて集まることがなくなったと言う話をよく聞く。
そしてコミュニティーにはそれらの構成メンバーをつなぐおせっかい役のような方が必ずいた。一族の長老のような方であれば、その奥様であったりだとか、娘または息子などがなんだかんだと声をかけて、誰が集まるから来ないかとか、そのようなことをしていたわけである。会社でもそう言ったことが好きな人がいて、声をかけながら忘年会をやったり、歓送迎会で盛り上がったりしてきた。地域の寄り集まりでも自分よりいわゆる他人のことを世話するのが好きな人がコミュニティーをつないでいたと思う。もちろん今でもそのような事は多かれ少なかれあるのだが、だいぶメインストリームからなくなってしまい、基本は個別であり、小さなグループ化をしてしまっているように思われる。そうなると人が集まらなくなるので、おいしいお菓子を買って持ち寄るとか、郷里のお土産を買ってみんなで交換し合うなどといったことがなくなっていくわけである。冠婚葬祭もおせっかい役が声をかけて、なんだかんだと集まることがあれば、それに伴って、お菓子の折り詰めも出るのだが、もうそんな面倒な事はしなくていいような雰囲気にだんだんなっていき、そしておせっかい役の方がいなくなってしまうともはや分断されてしまって、何年も会ってないなどということになっているようだ。
つまり、和菓子の折りが出なくなったと言う背景には、おせっかい役がいなくなってきた、そういった面倒なことに首を突っ込む人が少なくなってきたと言うことの表れなのではないか。

近頃ではハラスメントや人に対してのコミュニケーションで批判されることもあり、おせっかいだった人もずいぶんとなりをひそめてしまっているように思える。

いろいろな考えが世の中にあるが、しかしながら、家族や親族の間の良いコミュニケーションも、そして何より、大事な信頼関係や平和を構成する要素として、様々な寄り合いにはこのようなおせっかいな役回りをする人が必要なのだと思う。時代が変わって、手段が変われど、今はSNSが発達しているので、連絡をとって、それで終わりということではなく、実際にお菓子を持ち寄って、ぜひ顔を合わせる。そんな年末年始であったら良いなと願うばかりである。

代表取締役 尾関 勇